過疎地域での医療活動
日本の医療体制で今後問題となることの一つは、山間部や離島の様な過疎地域での医療の充実が継続できるかどうかです。
高度な専門治療のみならず、日常の医療すら満足に受けられないという地域が日本にはあります。
65歳以上の住民が人口の半分以上を占める「限界集落」では、
具合が悪くなっても患者が医療機関に診療を受けに行くことが困難です。
また、地域の中核病院においても医師不足が指摘されています。
そこで地域医療振興協会は、
すべての地域で、いついかなる時でも医療が受けられる体制を備えようと、
自治体からの委託などを受けて病院、診療所などの施設の運営を行っています。
医師が不足している医療機関への医師の派遣にも取り組んでいます。
地域の医療機関で必要とされるのはどちらかというと、
一つの分野のスペシャリストではなく、総合的に対応できるジェネラリストです。
たとえば普通の風邪の診療、慢性的な疾患の経過観察、
様々な症状を横断的に診察できることです。
もちろん、必要ならば適切なスペシャリストを紹介できることも求められます。
このようなジェネラリストを育成することも、地域医療振興協会の重要な業務の一つとしています。
また、離島への医師派遣が必要になった場合に、ヘリコプターで移動するという事も始めています。
具体的に見てみると、医師派遣によるへき地支援は年間のべ6000日以上。
普段は公募制ですが、必要に応じて緊急派遣も行っています。
また、へき地医療に対する理解を深めるため、
ジェネラリスト育成には3ヵ月の地域研修を取り入れています。
その研修の後、地域医療専門医を育成するプログラムや、
アメリカ式の教育方法を用いるプログラム、そして病院の専門家研修などを実施しています。
離島医療や医師の気持ち
へき地支援の分かりやすい例として、沖縄の離島医療が挙げられます。
「ゆいまーる」という助け合いの心という意味の名を持つプロジェクトを立ち上げ、
へき地医療支援、ドクターバンク事業などを行っています。
出産や育児などでしばらく現場を離れていた医師や、
退職した医師の再就職に関する相談に応じており、随時エントリーを受け付けています。
条件が適合すれば現地で診療に携わってもらうという事です。
勤務期間は1週間程度から1年以上まで多岐にわたっています。
実際に地域で活躍する医師たちは、どのようなことを考えて活動しているのでしょう。
医師たちの本音が聞けるブログが週1回ほど更新されています。
たとえば都市部で地域医療の研修をしているところが不思議に思えますが、
昔ながらのエレベーターのない団地が林立していて、一人暮らしの高齢者が身動きがとりにくく困っているそうです。
家族との連絡が困難だったり、家族が介護できなかったりするなど、
地方の病院よりも却って難しいこともあるそうです。
他にも地方の病院における困難や、逆に地方に行ったためにわかったこと、得たことなどをつづっています。